僕が選ぶディック・フランシスのベスト小説は「大穴」:好きな作家

好きな作家は誰と聞かれて1人の作家を選ぶのはなかなか難しいけど、僕はまずディック・フランシスの名を挙げます。
彼はイギリスの作家で、もともとは障害競馬の騎手でした。リーディングジョッキーにもなったことのある人気ジョッキーでした。
(リーディングジョッキーとは最多勝利騎手のこと)
また、エリザベス王太后の専属ジョッキーを務めていた時期もありました。その彼が引退後に選んだ仕事が作家だったのです。
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初めて彼の小説を読んだのは大学生の時。
当時競馬に興味を持ち始めていた僕に、友達ががディック・フランシスという作家を教えてくれて、とりあえず1冊手にしたのがきっかけでした。
日本では、早川書房から全小説翻訳版が出版されています。
全て漢字2文字の二字熟語のタイトルがつけられているのが特徴で、本屋で目にした事のある方も多いと思います。
某テレビ局の人気刑事ドラマのタイトルがこのスタイルを真似したとかしなかったとか、当時密かに囁かれていました。
小説の内容は、ほとんどがミステリーハードボイルドです。一般に考えれば非常識なことも彼の小説では客観的に捉えられる、そこに引き込まれます。
舞台設定は様々ですが、必ず競馬に関わる主人公が登場します。騎手、調教師、ワイン商、探偵など。
いつも主人公は窮地に立たされます。死にかけることは毎度のことで、幾多の逆境にもめげす、諦めず、最後は常に主人公が勝利を勝ち取るというストーリーです。
恐らく作家自身の騎手生活の中で学んだ人生観、どんな状況でも最後まで諦めず勝利を目指すという強い意志が彼の全ての小説の原点になっていると思います。
シッド・ハレーシリーズでなんども夜更かし
最終的に僕は彼の全ての小説読みましたが、一番最初に読んだ「大穴」が印象に残っています。やっぱり最初の出会いは強烈でした。
彼の小説は全部で41冊、彼が亡くなってからは息子さんが書きかけの原稿を引き受け共著として4冊の小説が出ています。
彼の作品で基本的にシリーズものはないのですが、唯一の例外がこの「大穴」に登場する主人公シッド・ハレーです。
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大穴 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [ ディック・フランシス ] 価格:946円 |
「利腕」「敵手」「再起」と全4冊に登場します。
シッド・ハレーは、元障害競馬の騎手でレース中の事故で片腕が不自由となり引退。その後、探偵に転職するという設定です。
競馬界を舞台にした不正を調査していく上で、幾度となく困難に直面するのですが、そこに家庭内の事情も絡めつつ進行していきます。
上手くいかない夫婦関係に、何故か気の合う義父。夫婦関係は破綻するも、義父との関係は継続しいつも救いの手を差し伸べてくれます。
シッド・ハレーシリーズだけではないですが、読んでいくうちに常にほんとにハラハラドキドキの展開で、読書が原因で夜更かししてしまったことも何度もありました。
完全に自分が主人公の立ち位置に引き込まれてしまうのです。
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40を超える作品を残した中で、個人の好みはあると思いますが、僕にとっては駄作は1冊もなく、これだけの作品を残したディック・フランシスには称賛の言葉しかありません。
残念ながら2010年に他界して、新作は期待できないですが、彼の残した作品を繰り返し読んでいきたいものです。
僅かな可能性は、晩年の数作品と同様、次男と共作した作品がまだどこかでひっそりと残っているかもしれない、という事でしょうか。
1ファンとしては、新作を読みたいような、そうでないような、複雑な心境かもしれません。
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