シリカエアロゲルで火星にドーム型の温室を作って定住出来る日はくるのか

他の惑星を地球化する。これをテラフォーミングといいますね。
空想を広げて、テラフォーミングで他の惑星への移住が可能だと考えている科学者は結構いるようです。
今のところ候補として科学者たちがアツい期待をよせているのは、褐色の惑星「火星」。
火星では30秒で失神できる
でもですね、現実には
・0.2%にも満たない微々たる酸素量
・紫外線や放射線を浴びる量ハンパなし
・平均気温はマイナス43度
・最低気温は150度以下
こんな感じなので人間がとうてい住める環境ではなさそうです。
火星の大気は95%が二酸化炭素なので、外にちょろっと出ると30秒もしないうちに失神して、サヨナラ〜って感じになるようですよ。
でも、でも。もしかしたらシェルターのような物を作って、屋内でなら住めるようになるかもしれない。それを実現できそうな「シェルター素材」に最近注目が集まっているようです。
シリカエアロゲルって何?
そのシェルター素材は「シリカエアロゲル」というもの。なんだか言いづらいので、僕は「シリコンで空気のようなジェル」と覚えています。
透明なその見たから凍った煙という意味で「フローズンスモーク」なんて呼ばれ方もするようですね。
顕微鏡で見るとスポンジのような物質で、岩石や土砂などと同じ酸化ケイ素が主成分。
ガラスの素材のような物ですが、その主成分の密度が赤ちゃんの肌のようにとてもキメ細かくて、さらに98%は空気で出来ているという”個体”です。
このシリカエアロゲルの持つ特性から、これで火星に温室を、あの植物を育てるようなたいていドーム型をしている建物を作れるかもしれない、と科学者たちは考えているようです。
名付けて「個体温室効果」。
どういうことがいうと、火星にはすでにドライアイスがあると発見されています。ドライアイスは商品の名前ですが、科学的にいうと「固形二酸化炭素」。
火星の大気の95%が二酸化炭素だと言いますから、火星にドライアイスがあるのは不思議なことではありません。
そのドライアイスは覆っている部分の下で火星の地熱を閉じ込める働きをしています。火星には四季がありますから、春に入ると気温は上がりはじめ、夏には20度くらいまで上がるようです。
ドライアイスの下に閉じ込めれた地熱
温められた地熱は二酸化炭素ガスとして噴水のようにシューシューッと吹き出します。
このガスを使って温室をつくれないか、火星で同じ温室効果を作れる素材はないだろうか、とたどり着いたのが
「シリカエアロゲル」だ!
というわけです。
シリカエアロゲルの利点はまず、透明なので光合成が可能ということです。次に「絶縁体」であるということ。絶縁体とは電気を伝えない物質のことですね。
断熱効果があると言われているガラス繊維の、なんと、39倍もあるというではないですか。
すでにこのシリカエアロゲルは実際に火星で使われていて、人類が火星へ送った探査機の部品を凍結から防ぐために活躍しています。
先程も言いましたように、火星の平均気温はマイナス43度。真冬になればマイナス150度まで下がるというんですから探査機への対策も必要です。
このシリカエアロゲル、実は紫外線を防ぐ効果もあります。紫外線はお肌に悪いだけではありません、ヒトのDNAを破壊してしまうのです。
まだまだ研究が必要
ここまでの話だと、シリカエアロゲルでシェルターを作ればすぐにでも火星に定住できそうですね。
イーロン・マスクが、すぐにでも着手してくれそうなアイディアですが、本当にそれが可能かどうかというのは火星と同じ環境をつくり、起こりうるすべての状況を想定した実証実験をする必要があります。
なんせ火星の外ではヒトは1分たりとも生きられませんからね。
まず研究チームは火星に降り注ぐ太陽の光を人工的に作り、その光をボリスチレンボックスの中に入れた約2.5cmの厚さのシリカエアロゲルに当てました。
たった2.5cmの厚さのシリカエアロゲルですが、内部の絶対温度が50ケルビン上がったことを確認したのです。
シリカエアロゲルはフローズンスモークというあだ名がついている通り色がほぼ白いのが特徴で、さらに温度を上げるためには改良が必要になるでしょう。
半透明にすればさらに太陽の光をキャッチして閉じ込めることができるようになります。
温度を保つことができればシリカエアロゲルで作られた温室で植物を育てることも可能ですし、食料だって栽培できるかも?条件が整えば藻類だって成長させることができます。
希望が膨らみますね。
しかしシリカエアロゲルには弱点もあります。シリカエアロゲルはガラスと似ていて、頑固な硬さと同時にモロいのです。
まるで人の心のようです。
なので人が2人でいると心強くなるように、シリカエアロゲルも他の素材と混ぜて弾力性を持たせることでモロさのレベルを低く抑えるようにしなければなりません。
むろん野球やサッカー、バスケットボールなんて球技はシリカエアロゲルの中では絶対禁止です。
研究者の実験はまだ続きます。実験室から次は火星の環境に近い場所へ、実際にシリカエアロゲルで出来た温室を建設してみるのです。
火星の環境に近い場所としてまずは南極大陸、そして南米にあるアタカマ砂漠といった場所が挙げられています。
そこでシリカエアロゲルが過酷な環境の下でどのように機能するのかを記録します。
シリカエアロゲルは厳しい審査を通過することはできるでしょうか。
科学は火星を征服出来るでしょうか