彼女たちの夜明け:主役2人の声のトーン

Abigail and Tallie

彼女たちの夜明け。今日もヴァネッサ・カービーのインタビューからいいなぁと思った英語表現をメモ。ヴァネッサ・カービー。声のトーンから使うフレーズまでほんと良くて聞き入ってしまう。

このインタビューはホストのコメントと質問もよくて10回以上聞いてしまいました。

この映画は設定や演技に加えて「声」のトーンも重要な要素として組み込まれていますね。アビゲイルの声はどこか繊細で知性を醸し出しているし、タリーの声は重みがあって地に足がしっかりついてる中に自由な感受性の意思も含まれている感じ。

ホストはタリーの声が落ち着きを与えてくれて、アビゲイルとの間にいい架け橋を作っていたと言います。

なんか日本語で「架け橋」っていうとしっくり来ないんですけど、そういう表現がされてるんですね。

それからタリーには自分に対する認識と知識がある、このタリーの特性がどんな風にアビゲイルとの関係を築くのに影響したと思う?みたいなことを聞いています。

声の深みやトーンが権威と安心感を与える

それで、ヴァネッサが感嘆のため息をして、「はぁ、ほんといつもいい質問してくれる」っていうんです。”you always have the best question”って。

ヴァネッサの声は元からどちらかと言えば低くて深みがある方なんだけど、撮影前に監督と声のトーンについて話し合って、声のトーンはさらに低く抑えてセリフを言ってたようです。

男性陣については触れられていませんでしたが、監督のモナさんと主役の2人はグループ練習もしたとのこと。

深みのあるタリーの声のトーンはそのまま彼女の気質が表れてるし、繊細なんだけど官能的で、どこか彼女の心の深い所にある信念をその場にかもし出すエネルギーがあります。

アビゲイルはちょっと隠とん的というか内向的で、タリーはそんなアビゲイルに前に現れて、ある意味、ほとんど要求するかのようにアビゲイルの内面を表に出させようとします。

タリーの話し方や声のトーンは権威の中に安心感とある意味新しい風を吹き込むようにアビゲイルの中に入ってきて、心を開かざる得ない感覚にさせる。

タリーの声に重みがあればあるほど、アビゲイルは無関心でいることが難しくなる。

監督のモナとタリーの話し方や声のトーンについて話しながらヴァネッサはこんな風に思ったとのことでした。

ん〜深い。

声に深みを持たせれば持たせるほど、アビゲイルを無関心にさせない、ですよ。心理学の領域のようです。

最初の方のナレーションでアビゲイルは

”希望や誇りはほとんど無いけれど、不確かな間隔で時折感じる幸福感と共に一年を迎える”

みたいなことを言いますね。

娘を失ってしまったアビゲイルとダイアーの毎日は、ほとんど孤立した場所でただ生き延びるだけの日々になっていて、刺激もなく自然と外界で起きていることや他の人に対して無関心になってしまっていたのかもしれません。

そこに異質なエネルギーを持ったタリーが現れるわけです。

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あの時代の妥当な人生選択

ここでホストがアビゲイルの旦那のダイアーは優しくはあるけど、心からアビゲイルの素質や知性を認識しているわけではない、と言えると思う?みたいな質問をします。

このコメントと質問にキャサリンは、あの時代のお見合い結婚には(今と比べて)違った温度差があると思う。アビゲイルにとってダイアーという男性は限られた環境の中ではパートナーとして賢明な選択だったように見える。

アビゲイルのいる世界では”幸せ”は期待するものではなくて、お見合い結婚をして日々を生き延びるのに、ごく”妥当な人生選択”がそこにあった。と。

でもアビゲイルは自分を少なからず尊重してくれる旦那はいても、本物と言える親密さとか繋がりを誰かに対して感じることは期待してないし、想像もしてないし、限界があるのも感じてたんじゃないかと思う。

でもアビゲイルがタリーに惹かれていったのは、アビゲイルとダイアーの間に”愛情”がなかったからではなくて、ダイアーにもアビゲイルの中に近づくのに限界があったからかもしれない。

むしろ登場人物4人全員に自分自身を表現することの限界というか欠陥はあったかもしれない。

そんな中タリーはアビゲイルに会って、抑えられていた彼女の本質的な素質を開放し始める。

と同時にアビゲイルに”本当の自分”を出していい、さらけ出していいというようなメッセージを送るというか、先にヴァネッサが言ったようにタリーはほとんどアビゲイルに”要求”するかのように彼女の中から”感情”を引き出そうとするわけです。

別の言い方をするとアビゲイルにとっては自分の知性や感情を開放する空間をタリーを通して見つけ、どっと親密さの中に入っていくわけです。

観る人によってアビゲイルに起こったタリーという出来事の捉え方は変わってくるでしょう。ただの物語ではなくて少なからず観た人の感情に何か後を残すような映画です。

日常でどこかで使いたい英語のフレーズ
”I’ve listened to you during the course of"
“it just so soothing and so calm"
“made for a great bridge"
“placement of her voice" 彼女の声の位置加減
“a very viscreral feeling"
“pot bound root"
“Tallie comes in with this enegy" エネルギーを持ったタリーが登場
“the gravity that her voice has, the less easy it is to ignore"
声に深みを持たせれば持たせるほど、無関心でいるのが難しくなる、簡単じゃなくなる
“I caught myself kind of leaning in just because it was so–“
傾いていくのを感じた
“evolution of the relationship" 関係の展開
“she has all these wonderfull attributes" 彼女は全てのいい特質をもっている
“is that fair to say about–“って言える?
“there are different degrees to it" 温度差がある
“out of limited option" 限られた選択肢
“this is totally reasonable" これは完全に理性的、合理的、妥当
“with modicum of respect" ささやかな尊重
“it’s one of those situations" あの状況の中で
参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=KkbYqsf0vcc

Posted by MIC